緒言では紀元2600年を記念して、古代から現代に至る日本の数学的歴史を網羅的に現す一大数学史と成る予定であったが、現実には余りにも大部と成る為に、洋算以前の数学に於ける日本国の貢献を記する為の編集とした旨を、学士院院長菊池大麓博士が書いている。全五巻の和算数学史を記述したのは、東北大學の林鶴一博士とその弟子である藤原松三郎博士である。このお二人は、明治期に洋算が導入された際の、ごく初期の学生であった。彼らは和算を実際に学んだかどうか知らないが、林、藤原、両博士が学生の当時、江戸以来の和算家はまだ存命であったらしい。和算から洋算へと学制が変化するに及び、和算の消滅が危惧された。それ故、日本の科学的創造性の源である和算の実体を残そうと奮闘された。特にこの研究を主に記述されたのは藤原松三郎博士であった。和算の方法論を詳細に論述し元、明から移入された算書である「算法統宗」「算学啓蒙」の両著書を消化して行く様を、説得力を持って記述している。



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